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第73話 風邪と甘い看病②

Author: 花柳響
last update Last Updated: 2026-01-18 18:01:28

「……ほら、口を開けろ」

 人肌ほどの適温になったスプーンが、私の口元に差し出される。

 いわゆる「あーん」だ。

 子供扱いされているようで、恥ずかしさに顔の熱がさらに上がる気がした。

「じ、自分で食べます……」

「手が震えているだろうが。こぼしてシーツを汚すつもりか? ……いいから開けろ、莉子」

 言葉こそ命令口調だけれど、その声色はどこまでも甘く、過保護に響く。

 私は観念して、小さく口を開けた。

 とろりと煮込まれた粥が、舌の上でほどけていく。

 優しい。

 驚くほど繊細で、深い味わいだった。卵のまろやかな甘みと、出汁の塩気が絶妙なバランスで体に染み込んでくる。

「……おいしい」

「当たり前だ。俺が作った」

「えっ……?」

 思わず目を見開くと、征也はバツが悪そうにふいと視線を逸らした。

「……使用人に作らせようとしたが……今の時期、誰が何を入れるかわからん。お前の口に入るものは、俺が管理する」

「……まさか、毒見まで?」

「お前を守るためなら、何だってする」

 大真面目な顔で言われて、胸の奥がきゅんと音を立てて締め付けられた。

 昨夜の侵入者騒ぎ。あれ以来、彼の警戒心は張り詰めた糸のように極限まで達しているのだろう。私を守りたいという一心で、キッチンに立ち、料理まで自分でしてしまうなんて。

 この人は、どこまで不器用で、どこまで徹底しているんだろう。

「ほら、次だ」

 差し出されるスプーン。

 私は巣の中の雛鳥のように、彼から与えられる食事を一口、また一口と受け入れた。

 彼が息を吹きかけるたび、その唇の動きに見とれてしまう。湯気を払う仕草が、どうしてこんなにも色っぽく見えるのだろう。

 冷たい水で濡らしたタオルで、私の汗ばんだ首筋を拭いてくれる手つきも、いつもの強引さが嘘のように丁寧で
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